この曲、実に豪華で煌びやかである。それだけでオーケストラ・レパートリーとして十分に残っていく価値がある。複雑な和音についてはこれを理解するのは極めて大変だが、共感覚の持ち主だったメシアンも和声というよりは「色」と捉えていたようだし、素人にとっても難解な曲としてではなく、出てくる音を素直に楽しめばいいと思う。
今回の演奏会、結論から言って大変感動した。鳥肌立ちまくりであった。
前回視聴のチョン・ミョンフン&東フィルはマラ9、これがすごく良かったので、今回、メシアン監修のもとCD録音をしたチョン・ミョンフンの指揮は外せなかった。そしてそれは正解。CDでは停滞気味のところがあったが、やはり生の高揚感はすごい。速いところのテンポは生理的にドンピシャ、見通しよく、CDでは疑問だったところが今回は気持ちよく聴けた。
鍵盤隊もよかった。務川のピアノは切れ味よく見事に弾き切っていたが、少し力が入ったか。
パーカッション。バスドラの地鳴りするパワー、ドラの響き。堪能した。ただウッドブロックがちょい強すぎ。あとクライマックスのシンバル3人が合わなかったのは残念。パーカスメンバーには、オーチャードの後のサントリーで響きに慣れないまま本番が来ちゃった感じかな。ま、本番あるあるでそれらはよしとしよう。後半はかなり集中力も上り、こちらの耳も慣れたのか、すごくよかった。5楽章と10楽章の最後のクレッシェンドはいままで聴いたことのない大きさにまで響き、圧倒された。
チョン・ミョンフンの指揮は横の流れを大切にした音楽で、非常にスムース。棒は迷いがなく、この曲を完全に手中にしたもの。どちらかというとオケの柔軟さが足りないところで音が混濁したか。飛び出しや、全く落っこちゃうみたいなのは流石になかったが、前半、曲想が変わるところがはっきりしないなど、オケ側の音処理の問題があったと思うし、所々違う音が鳴っているような気もした。
座る位置も悪かったか、音がモヤモヤ。ピアノも本来の煌びやかさがなく、コントラバスの低音はもごもごして音程感なし。も少し前か、いっそのことサイドの2階あたりがよかったか。鍵盤楽器が舞台端にきたので、ヴァイオリンの音も少し届きづらかった。これも座席位置によるかも。ただマルトノの手元がはっきり見え、チェロのソロも直視できたのは良かった。
完璧ではなかったかもしれないが、全体の流れの良さ、静かな部分の抒情性、次第に盛り上がる「愛のテーマ」をコントラスト豊かに聴かせるあたり、この曲の真価を表出した演奏と高く評価したい。